第1話 1968年の国際・国内情勢 – 連載『5月革命 50周年』

『5月革命 50周年』

彌永康夫

1968年5月にフランス全土をほぼ1か月にわたって麻痺させた「事件événements」は,日本では今でも「5月革命révolution de mai」と呼ばれている。今年はそれからすでに半世紀がたったことになり,年初からフランスのマスコミでは,数多くの特集が組まれている。ただし,少なくともここ20年以上,フランスでこの関連で「革命」という語が用いられることは例外的である。「事件(出来事)」さえも省いて,単に「68年5月Mai 68」と呼ぶのが最も一般的である。

ところで,私がフランス語の授業を担当し始めて間もない2000年代の初めころ,仏文和訳の授業で「5月革命」をテーマに取り上げたことがあった。ただし私には,聴講生の大半にとってこれは歴史上の事件ではあっても,その内容も意味も漠然としか知らないか,まったく未知のものであり,身近に感じるなどありえない,ということには考えも及ばなかった。そのことに気づいて愕然とした記憶がある。

それゆえ,まずは「5月革命」がどのようなものであったかを振り返ってみることにしよう。もっとも,そのためには,当時のフランスと世界の全体的な状況を大まかにではあれ,想起しておくことが必要だろう。

1968年の国際・国内情勢

1.-「フランスは退屈している」

1968年3月15日付の『ル・モンド』紙上に,同紙の政治部長で,フランスの内政に関する鋭い分析で知られたピエール・ヴィアンソン=ポンテPierre Viansson-Pontéが署名した,「フランスが退屈するとき…Quand la France s’ennuie …」と題する記事が掲載された。その書き出し部分と最後の数行を引用してみよう。

「現在,わが国の政治情勢を特徴づけているもの,それは退屈である。フランス人は退屈している。世界を揺るがせている激動に,フランス人は直接にも,間接にも加わっていないのである。(…)今やほぼ本土だけになった小さなフランスは,本当に不幸ではなく,また本当に繁栄もしていない。すべての国と平和な関係を保っているが,世界規模の出来事に大きな影響力を及ぼせる立場にもない。こうしたフランスにおいては,福祉と成長と同じくらい,熱意と想像力が求められているのである。それは確かに容易なことではない…しかしこの必要条件が満たされないと,無感覚症状が全身衰弱を引き起こしかねない。そして,過去にも見られたことだが,極端に言えば,一つの国が退屈ゆえに死滅することもありうる。Ce qui caractérise actuellement notre vie publique, c’est l’ennui. Les Français s’ennuient.  Ils ne participent ni de près ni de loin aux grandes convulsions qui secouent le monde…. Dans une petite France presque réduite à l’hexagone, qui n’est pas vraiment malheureuse ni vraiment prospère, en paix avec tout le monde, sans grande prise sur les événements mondiaux, l’ardeur et l’imagination sont aussi nécessaires que le bien-être et l’expansion… Ce n’est certes pas facile. S’il (cet impératif) n’est pas satisfait, l’anesthésie risque de provoquer la consomption. Et à la limite, cela s’est vu, un pays peut aussi périr d’ennui.」

この記事が出た1週間後の3月22日に,パリ大学ナンテール分校で学生による大学管理棟の占拠が始まり,これが「5月革命」の出発点となったことを考えると,ヴィアンソン=ポンテの分析力に疑問符が付くといっているだけでは済まないものを感じる。しかし,当時から半世紀が経過した2018年4月,『ル・モンド』がホームページに掲載した「3分で説明する68年5月の事件」と題したビデオでも,「フランスは退屈している」という言葉が最初に出てくる。そこでまずは,当時のフランスがどのような状況にあったか,簡単に思い出してみよう。

第2次世界大戦中,ド・ゴールCharles de Gaulle将軍はナチス・ドイツに占領されたフランスでレジスタンス運動の強力な指導者となり,大戦後の数か月間,解放されたフランスで臨時政府を率いた。しかし彼は,新しい憲法草案について主要政党との間に見解の相違があることを理由に,1946年1月に辞職を表明した。実を言えば,レジスタンス運動の英雄として世論の強い支持を期待できると考えて,すぐにも政権の座に呼び戻されると信じてとった行動だったが,その期待は裏切られて10年以上にわたる雌伏の時期(「砂漠横断traversée du désert」と呼ばれる)に耐えることになった。政権に復帰できたのはやっと1958年5月になってからだった。アルジェリア独立戦争で劣勢に立たされていた軍指導部が,アルジェで反政府蜂起(いろいろな呼び方があるが,マスコミではputsch d’Algerというのが一般的である)の強い希望に応えたものだった。しかしひとたび政権を握ったド・ゴールは,アルジェリアの独立を認めて戦争を終わらせる政策をとり,当初は彼を支持した軍部や極右勢力を敵に回すようになり,1962年には正式に独立アルジェリアが誕生した。それに対して,「フランスのアルジェリアAlgérie française」に固執する「秘密武装組織Organisation armée secrète=OAS」がテロ活動を展開したため,暗殺される危機感を抱いたド・ゴールは,全国民が参加する直接普通選挙suffrage universel directによる大統領選出を定めた憲法改定を決め,1962年秋の国民投票によってそれを承認させた。

1946年から1958年までの12年間続いた第4共和政下で,フランスでは「内閣の交代」が26回行われた。もっとも,同じ期間に首相の座に就いたのは18人であり,たとえ政府を率いなかったとしても内閣の主要ポストを複数の内閣の下で占めた政治家も多かった。それに対して,政権に復帰したド・ゴールが成立させた第5共和政は,1958年から1968年5月までの10年間,大統領はド・ゴール1人,首相はミシェル・ドブレMichel Debréとジョルジュ・ポンピドゥーGeorges Pompidouの2人しか数えない,超安定政権であった。とくに,当初は強権政治,さらに言えば独裁政治に走る危険を指摘されていたド・ゴールが,アルジェリア独立戦争という特異な状況下で反対勢力を押さえつけていたことは否めないとしても,1962年の憲法改定以降は,内政が安定していたのは確かである。

それと並行して,第2次世界大戦の終了後,「栄光の30年les trente Glorieuses」と呼ばれる高度経済成長期を経験したフランスは,戦争の荒廃から立ち直っただけでなく,急速な農業離れによる労働力の都市流入を利した製造業の目覚ましい発展の恩恵を受けるかたわら,レジスタンス時代に力をつけた左翼勢力の影響力が強かった戦後初期に基礎が築かれた社会福祉の充実とも相まって,1960年代の半ばごろには,政治の安定と経済の成長の中で「退屈」し始めていたのかもしれない。

もっとも,これはあくまで表面的な分析にとどまる。実際,アルジェリア戦争時代の反戦運動や,逆に軍部の反乱やその受け皿となった極右勢力などが,いずれもなお燻ぶっていた。そうした中で,思想・文化面を見ると,戦後すぐに一世を風靡したサルトルJean-Paul SartreとボーヴォワールSimone de Beauvoirに代表される実存主義existentialismeはすでに衰退し,そのあとにクロード・レヴィ=ストロースClaude Lévi-Straussを旗頭とする構造主義structuralismeや,そのあとをうかがうポスト構造主義がpoststructuralisme主流をなす一方,共産党に代表される伝統左翼を批判する多様な思想グループが乱立していた。

1940年代後半の「ベビーブームbaby-boom」世代が中等教育から大学へと進む時期が,ちょうど1960年代の終わりと重なった。「教育の民主化démocratisation de l’enseignement」あるいは「大衆化massification」が急速に進んでいるというのに,教育の内容はもちろん,中・高校や大学の施設が全く時代に追い付いていなかったうえに,高等教育を卒業しても,魅力ある就職先を見つけることも難しい,「閉塞社会société bloquée」が支配していた。かくして,高校生や大学生は「退屈する」どころか,鬱積する不満を抱えていた。こうして,伝統的な制度や権威が外見上は健在であるのに,それに対する不満がとくに若い世代の間で内向し,蓄積されていた。政治はそうした不満を反映するどころか,その存在にさえ気づいていないかのようにみえたし,労働組合などの既存組織も世代間の断絶を乗り越えられないでいた。

2.世界では

日本における「神田カルチエ・ラタン」を思い出すまでもなく,1968年という年はアメリカをはじめとして,アジア,西ヨーロッパ,東ヨーロッパ,中東など,世界のほとんどあらゆる地域で様々な形で戦争や内紛,反体制運動が展開された。

たとえばアメリカでは,ベトナム戦争反対運動が各地の大学に広がる一方で,フォークソングが若者の間に広く歌われ,ヒッピーたちが既存社会秩序の外側で独自の「コミュニティー」を形作ろうとしていた。そしてまた,公民権運動の指導者マーチン・ルーサー・キングMartin-Luther King牧師と,ケネディ元大統領の弟で民主党の有力な次期大統領候補であったロバート・ケネディRobert Kennedy上院議員が,それぞれ4月4日にメンフィス,そして6月6日ロスアンゼルスで暗殺されて,社会全体に大きな衝撃を与えた。

アジアでは,1967年に始まった中国の「文化大革命grande révolution culturelle」が最高潮に達していた。実際には,毛沢東派と「実権派」の間の権力争いととらえるべきなのだろうが,当時は,多くの若者たちの目に既成の秩序と権力を打倒する反体制の動きととらえられ,「造反有理(定着した仏訳はないようだ。毛沢東主義系のカナダ革命的共産党のパンフレットではon a raison de se révolterと訳している)」という考え方が共感を持って迎えられた。他方,1964年にアメリカが本格的な軍事介入を始めたベトナムでは,1968年1月に民族解放戦線Front national de libération=FNL(Viet Cong)によるテト攻勢Offensive du Têtが戦局に大きな転機をもたらした。関係国間の水面下の交渉が続いて,同年5月13日からパリで和平会談が開始されることになっていた。

ヨーロッパでは,1968年2月にチェコスロバキアでソ連一辺倒の共産党と政府に反対する「プラハの春printemps de Prague」の動きが始まる一方,イタリアのローマでは学生と警官隊の間で激しい衝突が発生し,5月ごろまで全国で学生による大学建物の占拠などが続いた。さらに,当時は共産党政権のもとにあった東ドイツで特異な地位を占めていたベルリンや,フランコ体制下にあったスペインでも,学生による反政府運動が政権側の弾圧に直面した。

中東に目を向けると,前年1967年5月に「第3次中東戦争troisième guerre du Moyen-Orient」に勝利したイスラエルが,パレスチナ全域をはじめ,シナイ半島やゴラン高原などを含めて,占領地territoires occupésを一挙に4倍に拡大して,パレスチナ解放機構Organisation de libération palestinienne=OLPのテロ活動を活発化させることになった。

中南米では,やはり前年の1967年10月にキューバ革命の英雄チェ・ゲバラがボリビア政府軍に捕らえられて,裁判も受けずに処刑されていたが,そのことがかえってゲバラの名を高め,彼の影響力を強めることになっていた。さらに,軍事政権に支配されていたブラジルとメキシコでも,春から秋にかけて学生が主導する激しい反体制運動がおこり,軍と警察による厳しい弾圧のために,メキシコでは多数の死者を出す暴動にまで発展した。

こうして,1968年とその前後の世界各地における主な出来事を足早に振り返ってみるだけでも,ヴィアンソン=ポンテの分析とは反対に,当時の世界が第2次大戦後の東西冷戦と,「欧米帝国主義」支配から大きく動き出そうとしていたことがわかる。アメリカは依然として世界最大の軍事大国ではあったが,経済面では日本や西ヨーロッパの高度成長によってその立場を脅かされ始めていたし,ベトナムをはじめとする国外における軍事介入に伴う財政面の重荷のため,それまでドルが保持していた唯一の国際通貨としての地位を失う危険を感じてもいた(1971年8月には,いわゆる「ニクソン・ショックchoc Nixon」をきっかけにドルの金兌換性convertibilité orが停止され,多数の国を巻き込む大規模な通貨レート(平価)見直しréajustement de paritésへとつながった)。

一方,ソ連を盟主とする「東側陣営」は,1940年代の末にすでにユーゴスラビアによって一枚岩体制を崩されていたが,1950年代の末に兆しを見せ始めた中ソ対立querelle sino-soviétiqueによって決定的な打撃を受けていた。そうした中で,米ソをはじめとする国連安保理事会の常任理事国が核兵器を独占できる体制を整える核不拡散条約Traité de non-prolifération (des armes) nucléaire(s)=TNPが1968年に調印され,冷戦に変わる緊張緩和détenteが端緒についたが,ベトナム戦争が終わるには1975年まで待たなければならなかった。

続く(次回は8/24日更新予定)

著者 : 彌永 康夫 エコール・プリモ講師。1965年~2000年在日フランス大使館広報部に勤務し、歴代の大使をはじめ、大統領、首相、官僚など、訪日するフランス要人の通訳をこなしたほか、膨大な量の時事日仏翻訳を担当、日仏間の相互理解の促進に努める。

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「ニュースピーク」-政治の言語と経営の言語(第4回/全4回)【時事フランス語への視点】

7. 政治の「新世界」とニュースピーク

2017年の大統領選挙でエマニュエル・マクロンが大方の予想を覆して当選したとき,彼が唱えた種々の主張の中で有権者に対するインパクトが最も大きかったものの一つが,「既存政治を一新」するため,従来の有力政治家を退陣させて,「新しい世界nouveau monde」の到来を可能にする,というものがあった。そうしたスローガンを象徴する用語として注目を集めたのは,「刷新renouvellement」であり「(既存の政党や政治家の)退陣dégagisme」であった。そして「責任をもってこうした破壊的創造をもたらす変貌を実現するためには,共同建設の精神に立ってエネルギーの解放を目指さなければならないil faut assumer cette transformation disruptive pour libérer les énergies dans un esprit de coconstruction」—政府が進めようとしていたフランス国鉄の改革や,大学への進学条件の見直しに反対する大規模なデモを前にして,マクロンがこのような言辞を弄したとしても,とくに驚く人はいなかったであろう。2018年3月23日付の『ル・モンド』は,「改革を推進するためにマクロンが選んだ言葉Macron et les mots choisis de la réforme」と題する記事をこのように書き出している。

ここにはdisruptifという形容詞の特異な用法を別にすれば,英語の単語は登場していない。しかし,「世論やマスコミの批判を浴びても責任をもって推進する」というニュアンスを持つ動詞assumerや,coconstructionという,意味は分かるが普通のフランス語辞書には採用されていない語の使用など,さらにはlibérer les énergiesといういかにも「新鮮な印象を与える」言い回しなど,どれをとっても伝統的な政治家のレトリックとは明らかに異なる。そうした「新しさ」こそが,「新世界」を目指すマクロンが与党に広く支持されるゆえんである。

そうした新しい言説を特徴づけているのは,「真実を直視することlangage de vérité」,「合理化の追求recherche de la rationalisation(「有効性の義務devoir de l’efficacité」という),「競争力の確保(devoir de la) compétitivité」,「教育的配慮travail de pédagogie」などの言葉ないし表現である。大統領だけでなく,フィリップ内閣の閣僚が競ってこうした言葉遣いを取り入れている。

これも別の機会にすでに書いたことだが,マクロンは西洋古典に深く精通し,高等師範学校への進学を目指したこともある教養人であり,かなり特殊なレトリックを使う。たとえば他動詞であるfaireとかtransformerを自動詞のように使ったり,agirとかavancerなどの動詞を目的補語なしに,それだけで完結しているかのように用いたりする(「絶対的用法emploi absolu」という)。一方で,古典や文学に関する知識を持たないと本当の意味がつかめない単語や言い回しを好んで用いるが,他方では「企業文化culture de l’entreprise」に大きく影響されて,合理性とか利潤の論理に基づいたビジネス・ニュースピークnovlangue du businessを自由に使いこなす。

確かに,文学的素養はマクロンや彼の支持者たちの言説に「趣味の良いbon goût」外観を与えている。それはサルコジ元大統領やヴォーキエ共和党首をはじめとして,「国民戦線FN」党首マリーヌ・ル・ペンMarine Le Penとか「反抗するフランスFI」の指導者ジャン=リュック・メランションJean-Luc Mélenchonの攻撃的で庶民的agressif et populaireな言葉遣いと対照をなすものである。

そればかりか,マクロンは好んで古めかしいとしか言いようのない言い回しや単語を用いるし,フランス人でも辞書で調べないと意味が分からないような特殊な用語を用いることさえある(一つの例を挙げると哲学者ポール・リクールPaul Ricoeurに独自の用語であるipséité(『ロワイヤル仏和』は哲学用語と断ったうえで,「そのもの性,自己同一性」という訳を示している)を種々の機会に利用して,一部のウェブサイトで揶揄された)。このipséitéについて,2018年2月2日付『ル・パリジアン』紙は,同じくマクロンの発言にしばしば登場する心理学用語のrémanence(「残像,残感覚」)とか医学用語のidiosyncrasie(「特異体質,特異な性質」)よりもさらに珍しい語であるとしている。

こうした教養をひけらかすような発言は,多くの失言や一部マスコミ関係者との過度に親密な関係が厳しい批判を浴びたフランソワ・オランドや,俗語的な表現を多用することをためらわないニコラ・サルコジという直接の前任者ふたりとの違いを際立たせ,大統領の権威を強調しようとする広報戦略の一環と解釈されている。しかし「理論化された衒学趣味pédantisme théorisé」が,逆にマクロンのイメージを傷つける危険をはらんでいることも明らかである。なぜなら,彼とその支持者たちが何よりも重要視した既存政治家やエリートの支配に終止符を打ち,「国民に近い新しい指導者」として振舞ううえで,文学や哲学の分野における深い教養を前面に出すことは不利だからである。マクロンが時として,俗語を通り超えて卑語とさえみなされている単語を使うのは,こうした危険を意識してのことだろうか。

それはともかく,マクロンと彼に近いスタッフが多くの英語を頻繁に使い,経営ニュースピークを駆使することは,大統領と国民の距離を縮めることには決して役立たないだろう。とくに,マクロンの当選から1年近くがたった2018年3月に発表したフランス国鉄SNCFの「改革」は,1980年代に日本で進められ,当時の国内おいて最も闘争的で反体制的であった国鉄労組の完全な解体につながった,「国鉄の分割・民営化」を想起させざるを得ない。フランス政府がこの改革を正当化するために展開している論理は,まさに経営者の論理に基づくものである。しかも,2017年秋の労働法典改革の時と同じように,SNCF改革も国会における詳細な討議を省略する授権法loi d’habilitationのみの審議による政令ordonnanceによるものとされているために,反対運動もマクロンの当選以降ではもっとも大規模なものになる可能性がある。

プロジェクト 2

8. ニュースピークの変遷

ここで冒頭に引用した,ブルディユーとヴァカンが2000年5月の『ル・モンド・ディプロマティック』に発表した文章に戻ってみたい。そこで二人の筆者がニュースピークあるいは「新しいグローバル普及言語」と呼んだものに含まれていた単語は,ほとんどすべて,たとえ最初は英語であってもフランス語に訳されたものだった。もっとも典型的なものを挙げると,「グローバル化mondialisation」,「柔軟性flexibilité」,「ガバナンスgouvernance」,「雇用されうる能力(エンプロワイアビィティ)employabilité」,「アンダークラスunderclass」,「排除exclusion」,「ニューエコノミーnouvelle économie」,「ゼロ・トレランスtolérance zéro」,「共同体主義communautarisme」,「多文化主義multiculturalisme」,「ポストモダンpostmoderne」,「エスニシティethnicité」,「少数派minorité」,「アイデンティティーidentité」,「細分化fragmentation」などである。

日本語では英語がそのままカタカナで使われたり,訳されているとしてもいかにも「こなれていない」日本語になっていたりする単語まで,多くがフランス語として普通に通用する訳を与えられている(もっともemployabilitéとかgouvernance,multiculturalismeは,もともとフランス語として持っていた意味とは異なる意味で使われている。またunderclassにはquart-mondeというフランス語訳を充てることが可能ではあるが,両者の意味は部分的にしか重ならない)。ここでより注目に値するのは,ブルディユーとヴァカンが挙げているニュースピークがほぼすべて,20世紀の最後の25年間に顕著になり,21世紀に入ってもなお全盛を誇っている「新自由主義経済néo-libéralisme」を象徴する用語であることだろう。ブルディユーらはこの「新自由主義革命」に対する批判を隠していない。その論旨を要約すると次のようになる。「新自由主義を標榜する人たちは,『(自由)市場の合理性』とか,『(文化的)アイデンティティー」を認知する必要,『(自己)責任』の再確認といった概念について,それらが歴史の中に張り巡らす根っこを消し去り,世界全体に広げ,グローバル化している。これらの常套句は,メディアで繰り返されるあまり,ついには一般常識になった。それらがフォード主義やケインズ主義が過去のものとなったアメリカ社会という,特異な歴史状況の中における複雑であり,批判の対象ともなっている現実を映し出しているにすぎないことが忘れられている。このアメリカ社会は今や,福祉国家の解体と,それに付随する刑罰的国家の異常発達,労働組合運動の粉砕,『株主価値』を唯一の基盤とする企業概念の圧倒的な支配,不安定雇用と社会的不安の拡がりなどを特徴としている。*」相当に難解な文章だが,これでも原文よりはかなり読みやすくしたつもりである。

ブルディユーとヴァカンは,ただ経済分野における新自由主義に対する反対を明らかにしているだけではない。彼らの主な関心はアメリカの大学,さらにはそれを超えてアメリカ社会全般を特徴づけている,「多文化主義」に向けられている。彼らによれば,この語の意味はヨーロッパとアメリカで微妙に異なっている。すなわち,ヨーロッパにおける「多文化主義」は市民生活において多様な文化の共存を認めることを意味しているが,アメリカでは黒人の疎外が現在でもなお続いていることや,「アメリカン・ドリーム」の危機を指しているのである。そして,そうした「多文化主義」は「グルーピズム(集団主義)」,ポピュリズムおよび道徳主義という,アメリカの国民的考え方に固有の欠陥に結び付く。

9. ブルディユーの時代と現在 ニュースピークの違い

「グローバル化」という概念についても,それがアメリカの圧倒的な力をあたかも自然の法則に沿う必然のように見せる,文化的エキュメニズムないしは経済的な宿命のように見せる役割を果たしているというのが,ブルディユーらの考えである。

このような主張は,とくに1990年代にブルディユーが極めて政治的な発言を繰り返したことを考えれば,不思議ではないかもしれない。ただし,当時は保守的論客からの批判にのみさらされていたこうした主張が,今やごく限られた少数派から支持されるだけになり,ブルディユーらが批判したグローバル化や経済的合理性,自己責任,アイデンティティーなどの語や考え方が広く常識として受け入れられていることは疑えない。ただ,もっぱら言葉の問題から考えるとき興味を引くのは,今から30年近く前にはその多くが英語そのままではなく,可能な限りフランス語に訳して用いられていた「ニュースピーク」用語が,現在では英語のまま用いられているだけでなく,英語を使うことが一種のステータス・シンボルになっているという事実である。

こうした「言語的エリート主義」と政治的ポピュリズムがどこまで共存できるのか。現時点ではまだ判断が難しい。しかし,「ニュースピーク」を操る人々と,大都市郊外や農村で社会的な疎外を日常的に肌で感じている人々との間には,大きな溝があることは否定できないはずである。**


*これは原文をかなり大幅に要約したものである。原文は次のとおりである。

Outre l’effet automatique de la circulation internationale des idées, qui tend par la logique propre à occulter les conditions et les significations d’origine (3), le jeu des définitions préalables et des déductions scolastiques substitue l’apparence de la nécessité logique à la contingence des nécessités sociologiques déniées et tend à masquer les racines historiques de tout un ensemble de questions et de notions — l’« efficacité » du marché (libre), le besoin de reconnaissance des « identités » (culturelles), ou encore la réaffirmation-célébration de la « responsabilité » (individuelle) — que l’on décrétera philosophiques, sociologiques, économiques ou politiques, selon le lieu et le moment de réception.

Ainsi planétarisés, mondialisés, au sens strictement géographique, en même temps que départicularisés, ces lieux communs que le ressassement médiatique transforme en sens commun universel parviennent à faire oublier qu’ils ne font bien souvent qu’exprimer, sous une forme tronquée et méconnaissable, y compris pour ceux qui les propagent, les réalités complexes et contestées d’une société historique particulière, tacitement constituée en modèle et en mesure de toutes choses : la société américaine de l’ère postfordiste et postkeynésienne. Cet unique super-pouvoir, cette Mecque symbolique de la Terre, est caractérisé par le démantèlement délibéré de l’Etat social et l’hypercroissance corrélative de l’Etat pénal, l’écrasement du mouvement syndical et la dictature de la conception de l’entreprise fondée sur la seule « valeur-actionnaire » , et leurs conséquences sociologiques, la généralisation du salariat précaire et de l’insécurité sociale, constituée en moteur privilégié de l’activité économique.

Il en est ainsi par exemple du débat flou et mou autour du « multiculturalisme » , terme importé en Europe pour désigner le pluralisme culturel dans la sphère civique alors qu’aux Etats-Unis il renvoie, dans le mouvement même par lequel il les masque, à l’exclusion continuée des Noirs et à la crise de la mythologie nationale du « rêve américain » de l’« opportunité pour tous » , corrélative de la banqueroute qui affecte le système d’enseignement public au moment où la compétition pour le capital culturel s’intensifie et où les inégalités de classe s’accroissent de manière vertigineuse. Pierre Bourdieu et Loïc Wacquant : « La nouvelle vulgate planétaire », Le Monde diplomatique, mai 2000, pages 6 et 7

**この点について,マクロンが大統領に当選してからフランスの一部マスコミで用いられるようになった,字面だけを見てもすぐにはその意味が理解できない表現がある。(théorie de) ruissellementがそれである。これも実はサプライサイド経済学économie de l’offreの中心的な思想の一つとみなされているもので,日本では一般に英語をそのままカタカナにして「トリクルダウン理論」というが,専門家の間では「均霑理論」という呼び方もある。ごく単純化して言えば,「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」という考え方に基づいている。日本でも,「アベノミクス」の特徴とされているが,一般報道紙で取り上げられたことはほとんどないように思える。新自由主義が世界を席巻し始めた1970年代終わりごろから,この考え方が大部分の資本主義国で多少なりとも主流になってきたが,それが言われているような効果を発揮した例はない。その理由としては,新自由主義の必然的な結果である社会格差の深刻化を挙げることができる。また,伝統的な産業が環境面における壁に突き当たっている一方で,新しい産業とみなされる活動が,雇用の増大につながらないどころか,むしろ短期的には雇用破壊をもたらしているという事実もある,そしてまた,富の偏在に伴って,少数派が資産をますます蓄積することは,必ずしも新たな富の生産につながらない。

ところで,マクロンは2017年10月にテレビ局TF1とのインタヴューで,「(ザイルで互いに結ばれた)登山パーティーの先頭に立つものpremier de cordée」という言い回しで,トリクルダウン理論を擁護しているかのような発言をした。フランスのマスコミでruissellementという語がこの意味で使われるようになったのは,これがきっかけの一つになったと想像される。多くの解説者から批判されたにもかかわらず,大統領はこの考え方に強い執着を見せている。たとえば,2018年3月,同じテレビ局と行ったインタヴューでも,ruissellementという語そのものは使わなかったとはいえ,premier de cordéeという表現を再び用いて,基本的に富裕層の資産を増やすことが社会全体を富ませることにつながる,という考えを変えていないことを示した。

1 1. Novlangueという語 2.「経営ニュースピークnovlangue managériale

2 3. Disruptionという言葉 4. Disruptionの使われ方

第3回 5. Euphémisation – 経営ニュースピークのもう一つの特徴 6. ニュースピークの流行と複数のフランス語

著者 : 彌永 康夫 エコール・プリモ講師。1965年~2000年在日フランス大使館広報部に勤務し、歴代の大使をはじめ、大統領、首相、官僚など、訪日するフランス要人の通訳をこなしたほか、膨大な量の時事日仏翻訳を担当、日仏間の相互理解の促進に努める。

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「ニュースピーク」-政治の言語と経営の言語(第3回/全4回)【時事フランス語への視点】

5. Euphémisation – 経営ニュースピークのもう一つの特徴

「婉曲語法」と言われて,その意味をすぐに理解できる人がどのくらいいるだろうか。しかし,フランス語でeuphémismeという語はそれほど特殊な語ではない。仏和辞書で調べてみると,「婉曲語法」のほかに,「婉曲な言葉,遠回しの表現」となっている(『プチ・ロワイヤル仏和』)。この訳が間違っているとは言わないが,それではいかにも物足りない。なぜなら,フランス語のeuphémismeは,単に「遠回しな」あるいは「持って回った」表現というだけでなく,「不快なことをオブラートに包んで述べる」というニュアンスを含んでいるからである。

これこそまさに経営ニュースピークを特徴づけるものの一つだという。すでに引用した2018316日付『ル・モンド』の記事によると,社会学者アニエス・ヴァンデヴェルデ=ルガルがこのことを強調して,「時として肌で感じる現実より言葉が優位な位置を占め,あたかも魔法の単一思想pensée uniqueであるかのような役割を果たすことがあるLes mots en viennent parfois à prendre le pas sur les réalités vécues et fonctionnent comme une véritable pensée unique」と述べている(ちなみに,「単一思想」という表現は日本ではあまり見かけないが,フランスでは20世紀の末頃から,主として政治やメディアの世界で,他人を「大勢順応主義者conformiste」と非難するときに用いられてきた常套句である)。たとえば,あまりにも否定的なニュアンスを持つ語は企業内で使用を禁じられることがあるのは当然だろう。そこまでいかなくても,「従業員employé」という代わりに「部内ゲスト(インナー・ゲスト)」といったり,「解雇するlicencier」のではなく「自由にするlibérer」といったりする経営者がいる。これは極端な例かもしれないが,フランスではすでにはるか以前から,従業員の大量解雇が問題になる場合,「社会計画plan social」を実施するといわれてきた。

いうまでもないが,政治の世界で「婉曲語法」が多用されるのは,国を問わない。古い例だが,日本では長い間,「戦争」と言わずに「事変」と称していたし,「敗戦」は今でも「終戦」である。フランスでも,「(予算の)削減coupe budgétaire」は「最適化optimisation」になるし,移民の「国外追放expulsion」は「国境への見送りreconduite à la frontière」あるいは「遠ざけéloignement」と言われる。さらには,近年のテロ対策に関連してしばしば問題になった「夜間の家宅捜索perquisition nocturne」は,ただ「夜間の住居訪問visite domiciliaire de nuit」と呼ばれる。

これらは「婉曲話法」が政治の分野に持ち込まれたいくつかの例にすぎない。フランスに話を限ると,20175月に大統領に当選したエマニュエル・マクロンは就任早々,「旧世界」との断絶を現実のものとするために,選挙で公約した「改革」を矢継ぎ早に実行しようとした。たとえば「連帯資産税impôt de solidarité sur la fortune=ISF」の改正や労働法典Code du travailの「改革」であり,国鉄Société nationale du chemin de fer=SNCFの改組である。確かにそうした改革を進めるにあたっては,あらかじめ関係各方面との協議がすすめられたが,最終的には協議内容にかかわらず,政府が最初から予定していた施策を,時には強引な手法で押し通した。ISFについていえば,従来は動産,不動産いずれをも対象としていたこの税が,改正後は不動産だけに課税されることになった。その結果,金融資産のみを所有している人は,それがいかに巨額であろうとも,ISFの適用を受けないことになった。次に労働法典に関しては,「柔軟性と安定flexibilité et sécurité」を共に保証するとしながらも,実際には解雇の条件を緩和したばかりか,退職金額を実質的に削減した。さらに国鉄については,現状を過度に暗く描き出して,税金の無駄遣いをやめて,合理化を徹底させるとの論理の下で,部分的な競争原理の導入,職員の地位保障の段階的廃止,不採算路線の撤廃などを打ち出し,労働者の強い反対を招いている。こうした「改革」のどれを取ってみても,富裕層の既得権をますます強化する一方で,労働者や被雇用者の既得権に様々な枠をはめるものである。確かにSNCFに関するフランス政府の言説の多くは,日本では1980年代から90年代にマスコミの支持のもとに実施に移された国鉄の分割・民営化の際に用いられたものと大きな違いはない。しかし,現在のフランスではそこに経営ニュースピークに基づいた発想と,人事管理的な行動原理の勝利を見る論者も多い。実際,『ル・モンド』はあるとき,「マクロンは共和国の人事部長のように振舞っているMacron se comporte en DRH de la République」と書いたことがある(20171216日付同紙)。


6. ニュースピークの流行と複数のフランス語

アニエス・ヴァンドヴェルド=ルガルの著書から引用したニュースピークの例は,明らかに誇張され,戯画化されたものだろう。しかし,エマニュエル・マクロンがごく近いスタッフと内々に議論するときに英単語を多用することは知られている。それどころか,伝統的な保守を代表する政治家であり,フランスの「国民的なアイデンティティー」の擁護を唱えるロラン・ヴォーキエLaurent Wauquiezも,20182月にリヨンの商業学校で非公開で行った講演の中で,一部メディアの報道を批判して「でたらめ,でっち上げ」を意味する英語の俗語bullshitという語を用いたことで,大きな反響を呼んだ。ヴォーキエが高等師範学校という全国でも最難関とされる秀才校の出身であるだけに,なおのことこうした言葉遣いが衝撃を持って受け止められたのだろう。

しかし,作家ジャン=ミシェル・ドラコンテJean-Michel Delacomptée2018年にファイヤールFayard社から出版した『われらのフランス語Notre langue française』と題する著作には,「高等言語haute langue」から「郊外団地の言語langue des cités」まで,「専門家の技術言語langue technique, celle des spécialistes」や「混血言語langues métissées」,「地方・少数派言語langues régionales ou minoritaires」,「街頭言語langue des rues」,そして「標準言語langue standard」と,全部で7種類のフランス語が存在すると書かれている。そして,「標準言語」は構造を失いse déstructurer,貧困化の一途をたどっている,というのが著者の考えである。そして,このように言葉がその構造をなくしていくと,それを支える思考も軟弱なものになり,特徴のない無気力なものになる。

かつて私は,和文仏訳をテーマにした文章の中で,フランス語における「言語レベルniveau de langue」の違いを意識することの重要性を強調したことがある。その時には主として書き言葉と話し言葉,あるいは文語体と口語体を正しく使い分ける必要を説いたのだが,フランス語がこのように細分化され,フランス人の間でもお互いに理解しあうことが難しくなっているということになると,何が「正しいフランス語」なのか考え直す必要があるのかもしれない。

ドラコンテが『ル・モンド』とのインタヴューで述べているところに従えば,日常生活で用いられる実用的で実利につながる言葉でさえ,ますます貧しくなり,正書法orthographeは軽視されるようになっている。こうした中で,「技術・科学という土壌を耕す新しい方言ce néodialecte qui laboure sur les terres technicoscientifiques」であるニュースピークが幅を利かせている,ということになる。言語の貧困化を明らかに示す例として,彼はイギリスの児童文学作家イーニッド・ブライトンEnid Blytonによる『5人と1ぴきClub des cinq』のフランス語訳が,最初に出版された1955年と最新の訳である2006年の間にいかに変化したかに注目している。約50年の間に,多くの描写だけでなく,形容詞までもがなくなっているだけでなく,動詞は現在形だけで使われているという。

続く(次回は7月10日更新予定)

1 1. Novlangueという語 2.「経営ニュースピークnovlangue managériale

2 3. Disruptionという言葉 4. Disruptionの使われ方

著者 : 彌永 康夫 エコール・プリモ講師。1965年~2000年在日フランス大使館広報部に勤務し、歴代の大使をはじめ、大統領、首相、官僚など、訪日するフランス要人の通訳をこなしたほか、膨大な量の時事日仏翻訳を担当、日仏間の相互理解の促進に努める。

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通訳の精度を高めるノートテイキングとは?(「現役日仏通訳者に学ぶ、効果的なメモの取り方」レポート)

通訳しなければいけない発言を集中して聞くと、メモが取れなくなる。メモを取るほうに意識を向けてみると、今後は話についていけない。どうにかメモを取ってはみたものの、自分で書いておきながら何が書かれているのか、皆目わからなかったりする(涙)。とかく、メモを取るのは、難しいものです。

こうしたお悩みにお答えするために企画した今回のプログラム。「逐次通訳トレーニング」講座でもおなじみ、現役通訳者の野原道広先生が、メモの取り方のコツを教えてくれました。先生によると、メモは「言葉」ではなく「概念」を書き写すことが重要とのこと。その大前提をふまえた上で、略語、論理関係、否定、強調、箇条書きに関して、よく使われる記号の実例を紹介していただきました。

写真は、野原先生によるメモの一例です。たとえば、「最大」や「最小」を表す場合、MaxやMinを使うこともできますが、横線とそれに至る矢印を書くことで「概念」をメモすることもできます。他にも、フランス語でNous espérons que…と発話された場合、野原先生は、筆記体のIに小文字のsをつけて「私たち」を、希望の「希」で動詞のespérerをメモされていました。「漢字」は表意文字のため、概念を書き写すのにうってつけとのこと。思いがけない母国語のメリットですね!

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授業では、音声データを用いての実践演習も行いました。仏日では食の安全に関する国際会議を、日仏では空港での取締対策に関するルポルタージュを題材にしての演習でした。短い時間ではありましたが、先生のアドバイスを参考に、みなさん独自の書き方を模索されていたようです。通訳のトレーニングや実践を通じて、オリジナルの書き方が着実に身についていくはずです!

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「ニュースピーク」-政治の言語と経営の言語(第2回/全4回)【時事フランス語への視点】

3. Disruptionという言葉

「経営ニュースピーク」の中でもdisruptionという語は,特別に多く用いられている印象がある。この語はもともとフランス語にもあったし,現在でも語源を同じくする形容詞disruptifはPRにもAntidoteにも項目として採用されているから,英語からの借用というには当たらないかもしれない。さらに,disruptionはかつてフランス語から英語へ「移植」された語だということもできる。しかし,2018年3月21日付『ル・モンド』が「disruptionは肯定的なものなのか,われわれに進歩をもたらすものなのかLa « disruption » est-elle positive et nous fait-elle progresser ?」と題する記事で指摘しているように,マクロンが大統領に当選した後でこの語が突然,政治家やメディアの言説に頻繁に登場するようになった。一方,『リベラシオン』は,すでに1年以上前の2017年5月17日に,「disruptionをいかに生かすかDe l’art de la disruption」と題した記事を掲載している。同紙によれば,「新大統領がdisruptifであることは明らかであるIl est clair que notre nouveau président est «disruptif»」からこそ,disruptionがフランス語に戻ってきたのだという。

ところでこの語は何を意味しているのか。英和辞典でdisruption,あるいはその動詞形disruptを調べても,とても満足のゆく答えは見つからない。たとえば現代英語に強く,きわめて多数の用例を掲載していることで知られている『英辞郎』で見ても,断絶,混乱,途絶,分裂,崩壊といった訳語しか出ていない。先に引いた『ル・モンド』の記事によれば,この語は現在ではもっぱらマーケティング用語として用いられているという。そのような用法が確立したのはどうやら1990年代の後半らしいが,その正確な意味は今ひとつはっきりしない。確かに語源的に見れば断絶を意味するruptureとか,亀裂を意味するfractureと同根であり,断絶とか分裂,あるいは決別をまず思わせる。それから連想されるのは,経済や技術の分野でかなり以前から用いられている「ブレークスルー」という語である。これはネット上の辞書Weblioによれば,「行き詰まり状態を打開すること,科学,技術が飛躍的に進歩すること,難関や障害を突破すること」であり,中でも「従来の考え方の枠を大きく打ち破った考え方で解決策を見出すこと」と解釈できる。実は,break throughのフランス語訳として定着したものはなく,場合によってrupture, percée, avance, déblocage, découverte capitaleなどが使い分けられている。

マーケティング業界の用語としてのdisruptionについては,広告大手の電通系のウェブサイト「電通報」に「デジタル・ディスラプション時代の意思決定 ディスラプション時代の意思決定未来に先回りする思考法」と題する記事が出ているのを見つけた(https://dentsu-ho.com/articles/5148)。その中に「さまざまなテクノロジーによる破壊的なイノベーション=デジタル・ディスラプションに関する話題が急激に増えている」とする記述がある。また,「私の事典」というタイトルを持つウェブサイトには,「ビジネスの世界で,ディスラプト/ディスラプションの言葉がカタカナ英語として使われることがある。それらの言葉には,変革のための破壊という意味合いが込められていると思う。イノベーション{技術革新}によって,既存の技術が取って代わるのは世の常である」と書かれている(http://d.hatena.ne.jp/mydictionary/20160425/1461549837)。最後の文の意味はかなり漠然としているが,こうした説明のどれを読んでも,従来からある「ブレークスルー」や「イノベーション」とどこが違うのか,必ずしも判然としない。

いずれにしろ,こうした説明からも明らかなように,disruptionという語はその本来の意味が持っている否定的な語感とは異なり,きわめて肯定的なニュアンスで用いられている。それはあたかも,現状を変えるものは本質的に評価されるべきであり,逆に変化を遅らせようとするものはそれ自体として断罪されなければならない,と言っているかのようだ。どこかの国で,従来の政府与党を「ぶっ壊す」と宣言して人気を得て,反対派をすべてひっくるめて「守旧派」と断罪した首相がいたことを,思い出させるではないか。

4. Disruptionの使われ方

話がいささかそれた。ただしここで一つ確認しておくべきことがある。現在のフランスでdisruptionを標榜している人々がその成功例として最初に持ち出すのが,従来のタクシーやハイヤー(フランスにはハイヤーはこれまでほとんど存在していなかった)を追い落とす勢いを見せる,スマホを利用した自動車配車アプリ「ウーバー」を運営する事業とか,民泊提供者と利用者を結び付けるアプリ「Airbnb」などである(「ウーバーUber」はフランス語化されて,ubériserとかubérisationなどの新造語を生み出している)。こうした新しい経済活動が本当に「創造的破壊」と形容されるに値するかどうかについては議論の余地があるだろう。しかし,それらが従来型の事業を大いに脅かしたことは疑えない。他方,それらがその発明や開発に携わった人々や,その最初の利用者たちに大きな利益をもたらしたのは確かだとしても,社会や経済全体に本当に役立っているかどうかについては,意見が分かれている。ただし,そうした新しい事業に事業主あるいは出資者としてではなく,従業員として参加する人の大半が,劣悪な労働条件と,決して十分とは言えない収入を受け入れざるを得ない立場に置かれていることは,事実と言わざるを得ない。この点を指摘したのが,経済専門日刊紙「ラ・トリビュンヌ」である。前に引用した『ル・モンド』によれば,disruptionの理論家の一人であるクレイトン・クリステンセンClayton Christensenが2014年3月10日付「ラ・トリビュンヌLa Tribune」紙上で次のように述べている。

「disruptionが姿を現すのは,従来は利用が難しく,価格も高かった製品やサービスが,大勢の人に,安価で利用できるようになるときである。disruptionは既存のものより優れたものを提供すること(それはまさにイノベーションの役割である)で市場に変化をもたらすのではない。そうではなくて,市場をより多くの人の手に届くものとすることで,それを変えるのである。elle (la disruption) se manifeste par un accès massif et simple à des produits et services auparavant peu accessibles ou coûteux. La « disruption » change un marché non pas avec un meilleur produit – c’est le rôle de l’innovation pure – , mais en l’ouvrant au plus grand nombre」

「もしdisruptionが既存の社会構造をますます加速化する速さで破壊することであるならば,それは「ソフトな」野蛮さbarbarie softとみなされるべきである。」このように述べたのは,フランスの哲学者ベルナール・スティグレールBernard Stieglerである。

続く

11. Novlangueという語 2.「経営ニュースピークnovlangue managériale

3 5. Euphémisation – 経営ニュースピークのもう一つの特徴6. ニュースピークの流行と複数のフランス語7.  政治の「新世界」とニュースピーク

著者 : 彌永 康夫 エコール・プリモ講師。1965年~2000年在日フランス大使館広報部に勤務し、歴代の大使をはじめ、大統領、首相、官僚など、訪日するフランス要人の通訳をこなしたほか、膨大な量の時事日仏翻訳を担当、日仏間の相互理解の促進に努める。

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「ニュースピーク」-政治の言語と経営の言語(第1回/全4回)【時事フランス語への視点】

エコール・プリモの「応用編時事フランス語和文仏訳」でおなじみ、『時事フランス語読解と作文のテクニック』(大修館書店)の続編を執筆中の彌永康夫先生から、興味深い記事をいただきました。タイトルは「ニュースピーク」。政治と経営で用いられている用語の特徴に着目した記事です。ジョージ・オーウェルの『1984年』がまるで現実のものとなりつつあるように思える今だからこそ、貴重な考察に思えます。4回に分けて掲載します。

1. Novlangueという語

Novlangueという語がある。それを最初に見たのはいつのことか,よくは覚えていない。たぶん,『ル・モンド・ディプロマティック』の2000年5月号に掲載された,ピエール・ブルディユーPierre Bourdieuと,彼の弟子でありアメリカのカリフォルニア大学で社会学を教えるロイック・ヴァカンLoïc Wacquantによる,「新しいグローバル普及言語La nouvelle vulgate planétaire」と題された文章を読んだ時ではないか。その書き出しに「すべての先進国において,企業経営者や国際高級官僚,メディアにしばしば登場する知識人,さらには高名なジャーナリストなどが,奇妙なニュースピークを使い始めている。一見したところ出どころさえ判別できないその語彙が人口に膾炙している…Dans tous les pays avancés, patrons et hauts fonctionnaires internationaux, intellectuels médiatiques et journalistes de haute volée se sont mis à parler une étrange novlangue dont le vocabulaire, apparemment surgi de nulle part, est dans toutes les bouches …」という一節があった。vulgateもnovlangueもその時に初めて目にしたか,たとえその前に目にしたことはあっても意味を忘れていたように思う。辞書で調べてみたところ,vulgateは「ウルガタ(4,5世紀に聖ヒロエニムス(Saint Jérôme)が訳したラテン語聖書;1546年のトレント公会議によってローマ教会公認の聖書とされた)」(ロワイヤル仏和)と説明されている。これではブルディユーとヴァカンの文章を読むうえで何の参考にもならない。しかし,vulgateという語がvulgaireやvulgarisationと同じ語源を持っていることは容易に想像できる。一方,novlangueはロワイヤル仏和にもスタンダード仏和にも出ていない。ただ,その語源を考えれば,言語を意味するlangueと,新しいを意味するnouveauを組み合わせた造語であると想像できる。当時,私はPRなどでも両語の意味を調べたが,それよりも『ディプロ』でこの二つの語がほぼ同義語のように用いられていることが強く印象に残った。

ちなみに,PRによるnovlangueとvulgateの語義説明は次のようになっている。

novlangue Langage stéréotypé dans lequel la réalité est édulcorée (cf. Langue de bois). Les clichés de la novlangue politique

vulgate 1. Relig. La Vulgate, version latine de la Bible, due à saint Jérôme et adoptée par le concile de Trente.

2. Par extension Texte, idéologie dans une version destinée au plus grand nombre. La vulgate marxiste, libérale. « la vulgate psychanalytique sur les bienfaits de la parole » (E. Carrère)

なお,novlangueについては語源の説明として「1948年にジョージ・オーウェルが小説『1984年』で作り出した英語ニュースピークの直訳calque de l’anglais newspeak, terme créé par George Orwell en 1948 dans son roman 1984」となっているのだが,その頃の私は『ル・モンド・ディプロマティック』の記事に対する興味のほうが強かったため,この説明については深く考えなかった。ジョージ・オーウェルの小説を読んだ人ならnewspeakがいかなる意味で使われているかを知っているだろうが,そうでない読者のために,『ウィキペディア』の「ニュースピーク」という項目からさわりの個所を引用しておこう。

「ニュースピーク(新語法、Newspeak)はジョージ・オーウェルの小説『1984年』(1949年出版)に描かれた架空の言語。作中の全体主義体制国家が実在の英語をもとにつくった新しい英語である。その目的は、国民の語彙や思考を制限し、党のイデオロギーに反する思想を考えられないようにして、支配を盤石なものにすることである。…その目的は、党の全体主義的イデオロギー(「イングソック」、Ingsoc、映画版では独裁政党の名前でもある)にもとづいて国民の思想を管理し、その幅を縮小し一方向に導き、イングソックのイデオロギーに反する思考(「思考犯罪」、thought crime、ニュースピークでは「crimethink」)ができなくなるようにすることである。ニュースピークは国民の思考を単純化するために、辞典の改訂版が出るたびに旧語法に由来する語の数を削減しており、オーウェルは作中で「世界で唯一、毎年語彙の数が減ってゆく言語」と述べている。」

2.「経営ニュースピークnovlangue managériale」

ところで最近,フランスの新聞を読んでいて,再びnovlangueとvulgateという語が頻繁に登場していることに気が付いた。たとえば2017年12月20日付フランス共産党機関紙『リュマニテ』に,「権力を握ったスタートアップ・ネーション エマニュエル・マクロン,自らの発言の責任を問われるLa « start-up nation » au pouvoir : Emmanuel Macron pris aux mots」と題して掲載された記事の中で,「…彼(マクロン)は英米の金融用語と並んで,階級的な挑発と本格的なニュースピークを用いることで,言葉によって点数を稼ぎ続けようとしている…il compte continuer à marquer des points avec les mots, en utilisant à la fois le vocabulaire anglo-saxon de la finance, les provocations de classe et une véritable novlangue」という一節がある。また,2018年3月16日付『ル・モンド』には,「企業のジャルゴン(仲間うちにだけ通じる特殊用語。専門用語。職業用語。—ウェブサイト『コトバンク』による),理解不能な方言le jargon d’entreprise, dialecte impénétrable」という記事の冒頭に「略語や英語からの借用,そして強い響きを持たない概念からなる経営ニュースピークが,言語に関する不安定な状況を作り出しているla novlangue managériale, mélange d’acronymes, d’anglicismes et de concepts évanescents, crée une « insécurité linguistique »」と書かれている。

この「経営ニュースピーク」を極端な形で戯画化すると,上に挙げた『ル・モンド』の記事(社会学者アニエス・ヴァンドヴェルド=ルガルAgnès Vandevelde-Rougaleが2017年にエレスErès社から出版した『経営ニュースピーク 支配と抵抗La Novlangue managériale, Emprise et résistance』を紹介している)に見られる実例のようになる。ここではまず原文を引用するほかにない。

« Bien souvent, le premier réflexe de survie du stagiaire arrivant dans l’« open space » sera alors de se constituer un lexique lui permettant de saisir les enjeux des conversations alentour. Sinon, impossible de comprendre cette phrase qui vous serait adressée par un supérieur sur le ton de l’évidence : « Tu prends la demi-journée pour benchmarker la solution et j’attends ton feedback ASAP. Je dois revenir demain vers le client en mode projet ! » S’y ajoutent, par écrit, au fil des mails professionnels, des abréviations toutes plus kabbalistiques les unes que les autres : TL;DR (too long; didn’t read, « trop long, pas lu »), LMK (let me know, « tiens-moi au courant »), TBD (to be determined, « à préciser »)… »

これはフランス語といえるのか,という疑問を抱いても不思議ではない。とはいえ,出だし部分を除けばほとんどが英語から借用した単語や略語で成り立っており,ASAP以外はそのフランス語訳も加えられているので,あえて訳すまでもないだろう。それでも一つだけ説明すると,open spaceと日本語で一般に用いられている「オープンスペース」は同じものではない。日本語では,この語は都市整備の分野で用いられることのほうが多いし,ビジネス関係で用いられるときには「オープンスペース・オフィス」を思わせるだろう。フランス語でもその意味で用いられているには違いないが,それと同時に従業員会議の場,あるいは従業員間の交流の場を意味することも多い。なお,as soon as possibleの略であるASAPについては,日本語版Googleで調べた限りでは,ビジネスメールなどで普通に用いられているようである。

この例を見て明らかなことは,「経営ニュースピーク」にきわめて多くの英語が取り入れられていることである。アメリカのスタンフォード大学でフランス文学を教えるかたわら,政治家の言説を分析する専門家としても知られているセシル・アルデュイCécile Alduyが,2018年3月23日付『ル・モンド』とのインタヴューで挙げている実例だけでも,marketing, deadline, process, streamlining, updater, reminder, timeline, project management, low cost, deal, data, feedbackなどがある。このほかにも,多くの新聞記事に必ずと言ってよいほど出てくるのが,bottom up, team building, performer, task forceなどの語である。

続く

2 3. Disruptionという言葉 4. Disruptionの使われ方

3 5. Euphémisation – 経営ニュースピークのもう一つの特徴6. ニュースピークの流行と複数のフランス語7.  政治の「新世界」とニュースピーク

著者 : 彌永 康夫 エコール・プリモ講師。1965年~2000年在日フランス大使館広報部に勤務し、歴代の大使をはじめ、大統領、首相、官僚など、訪日するフランス要人の通訳をこなしたほか、膨大な量の時事日仏翻訳を担当、日仏間の相互理解の促進に努める。

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